ごあいさつ(運営方針)
農村環境を活用した地域密着型介護サービスを目指して
社会福祉法人南之郷
理事長 富永勇次
世界で初めて公的介護保険制度を導入し、福祉先進国として知られるオランダ。そのオランダの農家がいま、世界各国の介護関係者から注目を集めているといいます。世界第2位の農産物輸出国であるオランダでは、自然が豊かで、植物や家畜と触れ合う機会を作りやすい農家を、農作物の生産場所としてだけではなく、精神的・肉体的にハンディキャップがある人や薬物依存のある人の働き口やリハビリ場所として活用してきた歴史があります。
近年では高齢化に伴い、農家に介護施設の機能を加え、資格を持った農業従事者や介護スタッフが要介護の高齢者のケアを行うケアファームと呼ばれる取り組みも活発になっており、あるデータでは、2001年に300ほどだったケアファームが、2013年には1,500ほどにまで増加しているそうです。
園芸療法やアニマルセラピーなどの福祉的役割はもちろん、農家にとっても新しい収入源になるとして期待されているケアファーム。我が国においても、人の気分を落ち着かせ、心を癒やしてくれる農家や農村地域の多面的機能が注目され始めています。そして今や国家戦略として位置づけ、我が国を挙げて向き合い出した「認知症ケア」。この「認知症ケア」に関しても日本同様、欧米各国とも頭を悩まし、野菜や果物の農場、牛や羊を飼う畜産農家などが認知症高齢者を受け入れ、緑豊かな自然な環境の中で共に過ごし、時には肥料や餌やり、収穫、清掃などいろいろの農作業を営む。このように自然の中で生活することで認知症の進行を遅らせ、施設入所することなく日々の生活を送ることができるといいます。
又、政府が推し進めている地方活性化戦略の一つに、「地方への人材の流動化」があります。地域活性化の取り組みを強化する地方自治体や事業継承問題の解決に取り組む地方企業の増加や、新規ビジネスシーズの誕生などを背景に、首都圏にとどまらずさまざまな地方で、専門性を持った人材が求められています。住まいを変えることを視野に入れることで、新たなキャリアアップの選択肢がみつかるかもしれません。進学や就職で今の居住エリアに移住したのち、生まれ育った出身地のエリアに戻り「両親のそばで暮らしたい」「生まれ育った街を活性化させたい」という思いからUターン、或いは首都圏で生まれ育ったが、地方での暮らしに魅力を感じ、地方に移住して「自然豊かな環境で暮らしたい」「伸び伸びできる環境で子育てをしたい」等々の思いからIターンをそれぞれ考えている方。 今からこのような方々が増えていくことが予想されます。
優秀な人材を採用したい地方都市の企業や地域活性化の取り組みを強化する地方自治体が増えたことで、Uターン、Iターンを増やすための制度を充実させる企業や自治体も増加しています。さらにIT基盤が整った今は、場所に制約されずにやりたいことを実現できる可能性が広がったとも言えるでしょう。
社会福祉法人南之郷も「自分の生まれ育った故郷の自然を肌で直接感じながら生活ができたらそれは最大の幸福だと思う」を大きなテーマの一つに掲げて設立致しました。以来、地域密着型サービスである特養とグループホームの運営を通じ、地域の皆様に喜んでいただける介護サービスの提供に努めてまいりました。高齢化に伴う「認知症ケア」と急務である過疎化への対応という大きな問題を解決するためにも、国の戦略にのっとり、当地域の農村環境及びUターン・Iターンの人材活用を通じ地域経済の活性化、地域セキュリティの強化を図り、より安心して暮らせるローカルコミュニティを創生できるとも考えております。
介護事業が疲弊した地域を支え、地域農業が介護機能の一部を担い、要介護高齢者と地域住民が互いに笑顔でいられる。このような地域密着型介護サービス事業所を構築して参ります。